2017年5月7日日曜日

アナと雪の女王

僕は結婚している。生涯の伴侶として愛を誓い合った女性がいて、彼女とは夫婦関係を六年やっている。でもうち2年は別居していました。詳細は省くけど、要するに僕は結婚生活でつまずいてきた方だ。子供は二人います。五歳の娘と生後半年の息子。彼らの愛くるしい笑顔と元気なドタバタで我が家はいつも賑わっている。子供たちの健やかな成長は喜ばしいし、目の前の明るく楽しい家庭の景色にはとても満足していて、ささやかな幸せを感じる今日です。


さて愛とはなんでしょう。あらためて、人を愛するってどういうことなのか。恋愛して、結婚して、家庭を持って6年が経って、齢33歳になる自分は、そろそろ愛の何たるかが分かってもいいおっさんかもしれない。たとえば今日、僕が妻や子を愛するということ。たとえば今、あなたが大好きな彼を愛するということ。その愛する気持ちに本物か嘘かを言うのは難しいのだけれど、人生の岐路に立たされるような瀬戸際では、それは自分への重要な問いになりうるのだ。



アナ雪のテーマは真実の愛。

アナの心に刺さったエルサの魔法を解くものは真実の愛だけ。それをトロールから聞いたアナは恋仲のハンスのもとへ向かう。しかし実はハンスは悪い奴で、アレンデール王国を乗っ取るつもりで近づいたにすぎず全くアナを愛してはいなかった。ビビビっと恋に落ち、結婚を誓いあい、信頼して国営の代理まで任せていたのに、彼の本意はエルサもアナも殺して国を混乱から救った英雄になることだった。

偽りの愛だと知って愕然とするアナにオラフが助言する。「愛っていうのは、自分のことより相手を大切に思うことだよ。クリストフがアナをハンスに託したようにさ」それを聞いたアナは、エルサと国を救うための苦難を共にし、ずっとそばで自分を助けてくれていたクリストフのもとへ向かう。

この流れのまま、本当に愛してくれる人とのキスで氷の魔法が解けて、運命の人が王子様じゃないのがちょっと意外でイイ感じで、想い合う二人が結ばれてよかったね、チャンチャン。っていうのが、ディズニー映画に慣れ親しんだ視聴者の想定しちゃうところなんだけれど、物語は良い意味で裏切ってくれた。

魔法を解くのはクリストフではなくアナ自身だった。しかも、クリストフに駆け寄って愛されようとするアナではなく、ハンスの剣からエルサを捨て身で守ろうとするアナだ。命がけで大切にされるのではなく、命がけで大切にすることのなかに、真実の愛がある。異性とのロマンスをあえて脇に置くことで、予定調和の斜め上を見せ、かつ、真実の愛について少し深く考えさせてくれる。

アナの愛はエルサの凍った心を溶かした。エルサもまた愛を理解し、怖れは消え、魔法の力をコントロールできるようになり、国は暖かさを取り戻す。エルサはアナを自分より大切に思ってはいたが、それも真実の愛ではなかったのだ。彼女の愛は、怖れのほうが勝っていたから。

王女姉妹は同時に愛を理解した、お互いの存在によって。という物語です。ありのままでいいのよー、家族や社会的責任から逃げて世を捨てても自分に正直がいいのよー、では終わりません。エルサは偽らなくなったがゆえの孤独と解放を経て、自立し、人を愛する意志と人から愛される喜びに還ります。

アナ雪、なかなか面白かったよ。